旅と時々、アファメーション

旅と時々、アファメーション

チキンだけど、冒険好き。

深夜の襲撃...

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住めば寝床です。

 

ヴゥーーン...ゥウン...

 

 

まるで巨大なファンが耳元で鳴っているかのように感じた頃、この時はまだ正確には夢の中だったかもしれない。

 

彼らが自らの羽を擦り合わせることによって発せられる独特の飛行音。

 

この音の正体が“アブ”であることに気づくのに、まだ数十秒の余白を残していた、と思われる。

 

寝ている身として、最初は何が起こったのか分からなかった。

 

夜も深まる頃、1匹ならず数匹のアブに頭をこつつかれ、自らが発する奇声とともに目覚め、加えてそこら中の皆様を起こしまくった、迷惑バックパッカーの実話をここに記しておきたい。

 

※このブログの資産価値はきわめて低いと思われるが、ホイアンの滞在を語るうえで、なくてはならず、本人にとって忘れ難い大切な記憶の一部なのだから、少しの脱線を許してもらい記しておくことにする。

 

 

わたしの泊まっている部屋は、部屋こそ仕切りがあって実質一人部屋なのだが、天井が筒抜けなので声は聞こえ放題、虫も自由に入ってき放題という造りなのだ。

 

何よりもネックなのは、暗黙の了解で虫と共存、ではなく、深い眠りから頭上を旋回する彼らの強烈なアタックで突如強制的に目覚めること、である。

 

キィヤアアアアァァァアア~~#$%#&+*+/#...

 

叫びとも唸りともつかぬ奇声。

 

深夜に大声を出してはならない、という理性を飛び越え、思考停止したのちその声は無意識のうちに遥か彼方まで放たれた。

 

思考がぼんやりしているところから、これがファンではなく虫がわたしの頭上(正確には顔周り)を旋回しつつ何を血迷ったかものすごい勢いで人間の頭をこつついている音だということにようやく気づいた。

 

手で追い払うのと同時に飛び起き、奇声を放つまで、数秒。

 

解説するとこのような感じだ。

 

一度のみならず、数度に渡って頭をこつつかれる攻撃を受けると、それはもう恐怖以上に、言葉で説明できることとできないことがごちゃまぜになって正常な思考を失ってしまう。本当に怖い時、人は声が出せないと思っていたが、頭で処理できる範疇を超えると実際このように奇声となって放たれる、ということが分かった...。

 

思わず、飛び起きてつっかけを乱暴に履いて、部屋を飛び出した。

 

直後、部屋の間仕切りを越えて、

 

「Are you okay?(あなた大丈夫?)」

「What happened to you?(何が起こったの???)」

 

と向かい側の女性が心配してくれている声が聞こえてきた。

 

また別の部屋の男性からは、

 

「Was that human?(今の人間?)」

 

という独り言のようにつぶやく声が漏れてきた...。

 

地味に響いた。

 

「アブが数匹わたしをアタックしてきて...」と説明しかけて、

 

この状況どれだけ分かってもらえるんだろうか?と自問しながら、

 

何が起こったかを言葉で説明する前にごめんなさいだろう、と彼女をはじめ同じひとつ屋根の下で寝ている住人全員へ向けてしこたま謝った。

 

深夜に皆を起こしてしまって本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

結局、「もう大丈夫だから」といって部屋に戻り、皆も安心してくれたのか安堵の笑い声が聞こえてきた。

 

再び眠りにつく時、また襲われるんじゃないだろうかとドキドキしながら、横になったが、こんなことで根をあげているようじゃ、まだまだだな、と自分に喝を入れながら、掛け布団で頭をまるっぽすっぽり覆うように執拗に深くかぶって再び夢の中へ戻った。

 

一人旅をすると精神的に強くなり、人としても成長する。

 

そう言われる所以は、何が起ころうとも、そしてときには理解に苦しむことも、ある意味自分で受け止めなければならず、日々移り変わる景色を受け流すように、ときには享受するように自分なりの解釈を加えて、咀嚼、そして消化してゆく過程を辿るからだろう。

 

少々のことでは動じない精神がおのずと鍛えられてゆく。

 

ありえないことが起こり、実際、慌てふためくのだが、次第にそのありえなささえも楽しんでしまえるようになるから不思議だ。

 

だからわたしは、旅行ではなく、旅にこだわりたい。

 

幼い頃、TVを通して夢見た旅人としての人生を今この瞬間歩んでいる。

 

これ面接で言ったら、完璧な答えになるな、と思った。

 

でも、旅人は面接なんて受けないよな、という辛口のもう一人の自分もいる。

 

そんなことは、分からないじゃないか。

 

何より、楽しいと思えることをして実際に楽しむことこそがこの世に生を受けて自分の人生を精一杯生きる意味なのである。

 

それで、周囲も笑わせられたら、最高だよな。

 

(注釈)

振り返ると、筆者が勝手にアブと思っていただけでその実態はカナブンだったかもしれません…。

 

続く...