Hai Van Passへ
「こんな時間から本気で行って帰ってくるつもりなのか?」と
冗談だろ?とでも言いたそうにわたしの気が変わるのを待つかのような表情のKim
「え、う、うん。」
ようやく見つけた運転手を逃すものか、いう自分と、
やっぱり諦めるしかないのか、という二人の自分が心の中で闘っていた。
(前回のお話の続きからなので、まだの方は↓記事を先にご覧ください)
reborn-to-be-free.hatenablog.com
そのうちに、近くにいた観光案内のお手伝いをしている数人を巻き込んで、彼女がこんなことを言ってるんだけど、どう思う?と話し始めた頃には、断られるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたが、ひと通り話し終えた後に彼が放った一言は、
自分がそこまで連れていって、またここまで送り届けてやるよ、
というものだった。
なんということだろう...。
実は、よくよく考えてみれば、ダナンからフエまでの往路のドライバーは運よく捕まったとしても、目的地に着いた後「はい、サイナラ」と言われてしまえばそれまでで、帰りのドライバーが見つからない、なんて事態を想定すると、今夜フライトで日本へ帰らなければならないわたしにとっては万が一今日中に帰ってこれないことの方が恐ろしいことだと思われた。(Grabアプリは、現在のところ一部の都市部でしか普及していないので田舎とは言わなくともちょっと都市部を逸れると捕まえるのがむずかしくなる可能性は十分にある。だから、尚更有り難かった)
要するに、半日わたしのために時間を取ってくれるらしい。
「いつもよりスピードを出すから、それでもついてくることが条件だよ」と言って、わたしのわがままな半日のプランに運転手兼トリップアドバイザーとして時間を使ってくれることを申し出てくれた。
そうと決まれば、話は早いもので、気がつくとKimが話していた数人の男女にしっかり掴まるよう言われて見送られ、後部座席に乗っていた。
確か、天気予報では、曇り時々雨だったはず。
見上げた空には、雲こそあるものの、太陽がここにいるよ、とでも言わんばかりに顔を出しダナンの海を照らすように燦々と降り注いでいた。
そんなお天気のもと、走り抜ける感慨は、はじめて遊園地の空中ブランコに乗ったときと同じくらいわたしを興奮させて、子どもの頃に戻ったかのような気分にさせてくれた。
しばらくは、ただ真っ直ぐ、まっすぐ、美しく永遠にどこまでも続いていくんじゃないかと思わせるダナンの海岸沿いをフエを目指して進む。
風を切り、ものすごい風圧を受けて走るバイクの速度は体感にしてもはや時速100kmを越えていたかもしれない。
ベトナムに来て誰かのバイクの背に乗るたびに、異常にスピードを感じるものだから、アーユルヴェーダでいうところの「あぁ、ヴァータが上がってしまう…」という状態になる(笑)
簡単にいうと、興奮状態がハイ続くということなのだが。
時折、Kimが気分はどうか?とかスピードにちゃんとついてこれてるか?と気にかけて聞いてくれる。
今日は朝から欧米人と韓国人の女の子を乗せたんだけど、どっちもバックパッカーだったんだ。それで、君もそうだから、もう3人目なんだ、と言ってとても楽しげに話す姿から、ふと、果たして初対面からこんなに楽しそうに話し掛けてくれるドライバーはいたかな?と気づけば、彼がはじめてかもしれない、ということも手伝って、何だか急に二人旅になったかのような楽しさを覚えた瞬間だった。
英語を母国語としないもの同士の会話はどこか心に余裕を生む。話すスピードも選ぶ言葉も相手にちゃんと伝わるかどうか危ういぎこちなささえも愛おしい。
...続く