捨てる勇気〜ハタラクって?〜
生粋の大阪人で弁が立つ。
独特のオモロイ世界観と言い回しで、話し始めれば竜巻のように止まらない。
こと論破、に関しても、右に出るものはいなかった。
それが、わたしの元・上司を語るうえで欠かせないキーワードだ。
加えて情に熱い人だった。
愛、とかクサい言葉も時には使って解説したりもする。
古風で、人格的には一癖も二癖もある人だったが、本質を捉えていて、学びや得るものは大きかったな、と今でも時々回想することがある。
今日は、その中でも特に印象的な言葉について触れてみようと思う。
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”今、手の中に持ってるものを離さへんかったら、新しいものは掴めへんねん”
例えば、このみかんを手に握ってるとするやろ?
ほんで、その前にある、さらに大っきいりんごを取りたい。
どうする?
離す・・・?
そう。
ほらな、一旦パーして離さへんかったら無理やろ?
目の前で実践してくれた。
グー、パー。
ゲット。
たしかに。
彼の言う通りである。
シンプルだが、ぜったい的な事実だった。
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結果、わたしは会社を辞めた。
きっかけは伝えなかったけれど、
そんなつもりで言ったんじゃない!と返されそうなことだけは確かだった。
新卒から8年勤めた出版社。
ひよっこから仕事のいろはを教わり、
8年の間に多くの経験と
ゆるがない自分の基盤みたいな部分をつくらせてもらった場所。
大好きだった。
経営者に恵まれ、仕事も、そこでの人との出会いも含めて、全てがかけがえのないものだった。
もちろん嫌なこともあった。
はらわたが煮えくりかえるほど腹が立ち、
悔しい、とか
悲しい、とかいう気持ちでやめようともがいた夜も数知れない。
でも、振り返った時、そこには自分の辿ってきた道と居場所がたしかにあって、求めてくれる人がいたのも事実だった。
もう、ここで学ぶことは何もありません。
最終的に、自分に嘘をつかず、そう言い切れた、のは
曲がりなりにも、一所懸命やり切ったからだった。
自分の好きを頼りに、制作の仕事にも幅を広げられたことも大きい。
でも、ここらで積み上げたジェンガを一旦0に崩そうと思った。
じゃないと新しいものは掴めへんねやったな。
安定しているけれど、このままじゃ死んでしまう...みたいな危機感を覚えて
わたしは会社を辞めた。
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新人なら、新人らしく言われたことだけをやっていればいい、
男尊女卑にはじまる差別的用語を聞かされる日もあった。
違うな?と思うことや微妙やなと思うことをやめるか、変えるか、せずにはいられないわたしの姿は、時に可愛くは映らなかったかもしれない。
他人に気に入られようと迎合したり、媚びたり、ごまを擦ったりするのが、嫌いな自分に、「もうちょい、しおらしくやれよ」と内心思われていたこともあっただろう。
それでも、曲げずに自分のスタイルを貫くうちに、次第に認めてもらえるようになっていった。
廊下ですれ違った後輩や関わりのある人から、忙しそうですね。それに、あの人の下は大変でしょう、そう労われることもあった。
「でも、〇〇さん(元上司)は、いつもかほさんのこと褒めてるから。」
「あいつは、口ではあんな言い方してるけど、お前のこと買ってるで。」
間接的にでも、そう言ってもらえた時には、変な?嬉しさがこみ上げてきた。
もう時効だから、書くけれど
当時、猫の手も借りたい一心で来ていただいていた派遣社員さんから、日に何度も彼の愚痴を聞かされていた。
「もう、ダメです。」
「昨日も腹が立って寝られませんでした」
「・・・。」
ごめんなさい。
朝礼暮改で言うことがすぐに変わってしまう姿は、たしかに人を疲れさせるよな...と。
代わりに謝らせてもらって何度繋ぎ止めたことか。
結果皆おやめになったけれど。。
ただ、やはり内部の人間と外から来てもらっている人との間に壁や温度差があることは仕方ないことだから、
そのままにしておいた。
女の先輩で彼に喧嘩を挑んだ人も個別に何人かいたな...
人間の人となりなんて完全には分からなくて当然だ。
何年も同じ空気の中で生きてたって所詮は違う生き物ですから。
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ある日は、こんなことを言われた。
働くっていうのは、”ハタ” ”ラク” ってことやで。
???
つまり、他人を楽にさせてナンボ、ってこと。
一癖も二癖もあったけど、
いただいた言葉の数々、きちんと血肉になっています。
8年の間に得られたエッセンスちゃんと自分に刻まれています。
今の自分をつくる上で書かせないメッセージです。
と言いたい。
いつか語録をまとめた記事でも書こうかしら?
やめたからこそ、今があるんです、ってこと
これからの人生で身を以て、証明していかないといけないし、
していく。
お前と一緒にまた働きたいわ、二度目も求めてもらえるように、自分にしか提供できない付加価値を提供できる人間になる。
自分のプロダクトで目の前の人を喜ばせる。
エンターテイナーになる、くらいの気持ちで夢はデッカく愚直にやっていこうと思う。