アルデンテに思ふこと
「好きなタイプは?」
「へ?」
「だから、好きな異性のタイプは?」
「あなたに聞いているんですよ」
「えっ、あっ、はぁ...苦笑」
面接会場の鉄パイプの椅子にぎこちなく座りながら、無難な答えを必死で探した。
予定調和が崩れる瞬間、
狼狽している様子が少しでも表に出ないように取り繕いながら、
決して豊富とは言えない頭の引き出しをむさぼった。
3, 2, 1... 0
チーン。
心の中で終了の合図が鳴ったような気がした。
もはや自分がなんて答えたのか、そもそも答えになっていたのか全く覚えていない。
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仮に
「目の前のあなたのような人です。」
と答えたとして。
...歯浮くワ。
(ちなみに、営業志望ではない。いくらなんでも違う。ごますりすぎや。)
時として、相手の顔色を伺ってしまう自分が登場する。
面接ってこんなにパンチ効いてたっけ?
そう言えば、と新卒の頃の面接を思い出す。
面接官のひとりである役員(貫禄と威厳をたっぷり兼ね揃えたお偉いさんという感じ)から、
最後にひとつだけ質問しますけど、
「もし、当社があなたを不採用にしたら、うちは損したことになりますかね?」
と聞かれた。
気合いと勢いと若さと自信で
「はい!大後悔です!」と満面の笑みをたたえて答えていた。
若いなぁ。笑
大人になるといろんなしがらみがついてくるんだよ、と教えない代わりにその青さを分けてほしい。
これで受かっちゃうんだから、ある意味これが新卒カードの強さ、というものなんでしょう。
あっけらかんとした若さが懐かしい。
ところで、話を戻すと
好きなタイプ...
いや、あるやろう。
思い出せ。
自分はすんなりと答えられなかった。
お風呂の中でひとり反省会である。
今は死語となりつつある、3K?もあるに越したことはないけど...まぁ二の次という感じ。
もっと大事なものがあるはずだ。
*
どこで見た表現だったか。
”自分なりの美学を持ち、勝手に生きている他人”
なんなんだ、このしっくりぴったりくる表現は。
目を瞬かせてうなづいてしまった。
そうそう、こんな感じ。
勝手に生きている他人、
響きの割りに、ちっとも冷たいということはない。
むしろ、その逆だ。
ドライなんかじゃない。
その内実は結構熱かったりする。
いざという時のやさしさは底なしだったりする。
自分なりの美学、生き方のベースを大事にして生きている。
うんうん。好きだ。
人としておもしろいかどうか、
良い意味で放って置いてくれる人...これだ!と思った。
しかし、今思えば答えなどどうでもいいのだ。
要は、会話が不自然になったり、途切れたりさえしなければ、余程変な回答をしない限り、つまりそれなりに答えておけば、OKなはずだ。
期せずして、最適解を得たような気になり満足していた。
次からは、ちゃんと答えを用意しておく。
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袋の表示から2分引く。
スパゲッティーを茹でながら思った。
異性に限らず、ひともパスタも芯のある感じが好きだ。