いのちの洗濯
Kimが一言、
「ごめんな、冬は何もないんだ」とポツリと言った。
(え...?むしろそこに魅力を感じていたんだけれど)
「でも、人生に疲れた時にこの景色に癒されることがあるんだ」と。
国や文化が違っても、案外皆同じように悩んでいたりしているのかもしれないと思った。
時々、ふと思う。
世間の自己啓発本に書いてあるように、過去を嘆かず、起こってもいない未来に不安を抱くことなく生きることができたら、どんなにラクだろうかと。
言葉にして言ってしまえるほど、簡単なことではないと知っているからこそ、大切なのは万人に好まれるような特効薬ではなく、自分なりに答えに近づくための糸口を持っているかどうかではないかと思う。
わたしの場合は、間違いなく旅だ。
Kimの場合もおそらくそうなのだろう。
彼も一人旅が好きなようで、自らバイクを運転してベトナム中を駆け巡ったらしい。
彼が生まれた村の話、これまで訪れた場所、彼のフィルターを通してベトナムの素晴らしさを教えてくれた。
それは、どんなに売れているガイドブックのおすすめよりも自ら手に取りたいと思える情報だった。
能動的に迷い、自らの意思で立ち止まる機会を持たなかったら、こんな時期にこんなところまでひとりでバックパックを背負って来なかっただろう。
人間なんて意外と簡単に壊れるし、迷って当然だと思う。
完全無敵のハイスペックな人間なんかになったって面白くもなんともない。
むしろ、喜怒哀楽があって人間らしい方がわたしは好きだな。
自分と向き合う時間を持ってここまで来てよかった、と思った。
続く...