フランス生まれ、ベトナム育ち
「チョコレートが好きか?」
と聞かれて、
「あんまり好きじゃない」と答える人をわたしは知らない。
世の中には、チョコレート中毒やカカオマニアといった人々が存在するほど、チョコは世界共通の嗜好品だなとあらためて思う。
しかし、言わせてもらうとチョコレート中毒の人は、本当に”チョコレート”そのものが好きなのだろうか?と、たまに、疑う気持ちも芽生えたりする。実際、簡単に手に入ってしまうチョコレートほど砂糖の含有量がチョコを生成するカカオのそれを上回っていることは事実であるから、そういう人は本来のチョコレートの味わい、つまりカカオに恋しているのではなく、単に砂糖を欲しているだけではなかろうか?と推測している。
砂糖中毒の恐ろしさについては、以下のドキュメンタリー映画がもっとも刺激的で役に立つと思っているので、参考程度に貼り付けておくことにする。
まぁ大抵、中毒まではいかなくとも、誰しも日常の中で空腹しのぎにポケットないしは鞄に忍ばせたチョコレートをお口の恋人につまんでいるだろう。
わたしの場合、毎日はいらなくても、たまに口にする本当のチョコレートの味には毎度感動すら覚えてしまう。個人的に、こだわるならカカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行う『Bean to Bar(ビーントゥーバー)』のスタイルやフェアトレードのチョコレートが好きだ。
加えてわたしの家族はわたし以上にチョコレートが好きで、これまで何度世界各国のチョコレートを旅先のお土産として持ち帰ったことだろう。
本当に美味しいものは量はいらないし、少しの量で満たされ、心が豊かになった気分になる。
過去に、ここホーチミンに数年ほど住んでいた友人から得た情報によると、ここにフランス人のオーナーがベトナム産の材料をつかって作る、何とも繊細なチョコレートがあるのだという。そんなことを聞いてしまったら、チョコ好きの端くれとして行かない理由はないので、さっそく午後のメインのイベントとして、フランス生まれ?はベトナム育ちのチョコに会いに行ってみた。
今回訪れた『Maison Marou』は観光客にお馴染みのBen Thanh市場から徒歩7分ほどのところにある。
店内のカカオの焙煎をおこなう、Bean to Bar(ビーントゥーバー)スタイルのこだわりのチョコレート屋さんのようだ。
太陽がさんさんと降り注ぎ日中の気温は35℃を上回る乾季のホーチミン。
吸い寄せられるように、近づいたレジ横のショーケースには可憐な技巧を凝らされたおしとやかなスイーツたちが行儀よく鎮座していた。オーナーがフランス人であることを思い出させる瞬間だった。
簡単にそれぞれの個性を説明してもらったが、見た目に分かるムース生地のなかにマンゴーやパッションフルーツ、バナナなど東南アジアを印象づける素材がつかわれていたりと発想がおもしろい。
おすすめを聞けば聞くほど余計に悩む結果となってしまった...。
悩んだ挙げ句、15時のお供に選んだスイーツはこちら。
説明を受けたときのカカオニブが印象的なティラミスをチョイスすることに。
値段こそ日本と変わらないというか若干強気な気もするが、ゆえに余計と期待が高まる。
イタリアンが好きなわたしにとって、ティラミスはド定番ではあるが、チョコレート屋さんのティラミスははじめてかもしれない...。
サーヴしてくれたお兄さんが冗談なのか本気なのか分からないけれど、「あっ」と思わず声に出したのもつかの間、お皿を90℃真横に傾けて「こんな感じ!」とよりスタイル良く整えてくれた。(どんな感じ...)
それくらい、しっかり立派に立っている証なんだろうか。
いざ、実食。
丁寧につくられたそれを一口一口、口に運ぶたびに繊細なクリームとチョコが見事に喧嘩せずにマッチしている。噛むたびに”カリカリッ”と歯にあたる香ばしいカカオニブがまた小気味よかった。
食べ進めるにつれて、あれだけの値段をはれる理由が分かるような気がした。実際、ベトナムコーヒーとのマリアージュも最高で甘すぎず本当にベストな組み合わせだと思った。
加えて、コーヒーにおいては、深入りでかつガツン、と濃い目が好みのわたしにとってベトナムコーヒーは神となった。
食後に店内をぐるっと周ってみたところ、テイクアウトも充実してる様子。
友人によると、こちらのブランドはバレンタインシーズンには日本にも上陸することがあるとかで値段が現地の2倍...に跳ね上がんだとか。
来店者層も外国人とか日本人が目立つくらいなので、何というかローカルとはかけ離れているなと瞬時に悟る結果に。
美しく整備された店内をゆっくりと見回るうちに、ここは本当は東京の一角ではないかと錯覚させられるほど、騒がしくバイクが行き交う外の喧騒を忘れてしまう。
実はここはちょっと変わった生チョコのフレーバーで人気というのも知る人ぞ知る人気の秘訣のようだ。
「フォー」味などベトナムを象徴とする、一見怯んでしまいそうなフレーバーが存在し、一度食べたらクセになるんだという。
想像に難い味に、今回はとても挑戦する勇気が出なかったが、それは次回のお楽しみに、とっておこうと思った。